好きなもの

自分の好きなものをちゃんと把握しておきたい。

たのしい!とか、すき!とか、その都度思うことはそれなりにあるけど、人に好きなものを聞かれたときとか、日々をどうやって過ごしているかという話になったときとか、よく思い出せずにうまく答えられないから。

それに、自分にとっても、好きなものをちゃんと自覚しておくことはよいことのような気がする。なんとなく気持ちが晴れないとき、どうすればよいのかのヒントになる。まあ、どうしようもないときはなにもしたくないから布団のなかでうずくまるしかないんだけど。そういうときもよくある。

さっき、親知らずの消毒をしてもらったあと、病院の近くのパン屋に寄った。ふつうの、地元のパン屋さんという感じ。そういえば、パン屋を見つけたとき、パン屋さんある~!と少しうれしくなったので、今までを思い返してみても、わたしはパン屋さんが好きなんだと思う。パンも好きだけど、パン屋さんで、何買おっかな~とうろうろするのが好きだ。どんなに高級なパン屋でもどれもせいぜい数百円だから、値段で諦めるということがない。パンはいつでも選び放題だ。

そのパン屋さんには、初めて見るパンがあった。二等辺三角形を立体にした形で、真っ白。パンなのに、鋭角で、とてもかたい。中にはチーズが入っているらしい。すこしあふれたチーズがかたまっていた。鋭利な見た目にひかれて買ってみた。どんな味かな。

とりあえずひとつ、わたしは、パン屋さんが好きだ。

親知らずを抜いた

さっき、 親知らずを抜いた。

わたしの親知らずは下の2本とも完全に埋まっているタイプだ。神経とも近いらしく、そんな簡単に抜けないし抜いたあとも大変。

2年前に下の右側を抜いたとき、死ぬほど痛くてなかなか血もとまらなくて、口がうまく開かないからごはんもあんまり食べられなくて口が開くようになっても右側でかめないから食べた気がしなくて、おまけにひどい風邪もひいて、散々な目に遭ったから、もう絶対に、絶対に抜かないと心に決めていた。

けれど、信頼できる歯医者さんで別の件でレントゲンをとったとき、親知らずあるじゃーん!早めに抜いたほうがいいよ!と強めに明るくすすめられたから、結局下の左側も抜くことにした。自分で抜く時期を決められるうちに、と思って。

そして今日、親知らずを抜いた。

3ヶ月も前に今日の予約をとったから、満を持して、という感じだ。

麻酔の注射は痛くて呻き声が出たけど、抜いているときは麻酔が効いているからもちろん痛くはない。まったく痛くはないけど、あ、歯茎を切ってる、血があふれてる、歯をめりめりしてる、もっっ、あ、いまちょっと抜けた、縫ってる、という感覚はなんとなくわかる。

途中、先生が「うん」とつぶやくのが聞こえた。「あっ」はこわいけど、「うん」はこわくない。むしろ予定通りな感じがして安心した。わかんないけど。でもちょうどウィーーンってやってるとき、ほかのところから看護師の人が来てちょっと別の話をしていて、わたしの歯に集中して!とは思った。あと抜き終わったあと、あれがない!○○さん持ってきて!とちょっと焦った感じで言っていて、はやく!!!とは思った。いろいろな思いがこもった抜歯は終わった。

たくさんの就活生が歩く晴れたまちの中、麻酔が効いてぼんやり開いている口をマスクで隠しながら家に帰る。口の中の血はちゃんと止まっているのだろうか。そろそろ麻酔が切れてきた。完全に切れたらどんな痛みに襲われるだろう。怖い思いは、まだまだ続く。

春の夜は少し上を向いて

晴れた日の春の夜は気持ちが良い。少し風が吹いていて、スーパーから5分歩いて家に帰る。

そういえば、季節の変わり目の頃には春/夏/秋/冬の夜の匂いがするなあと思っている気がする。季節が変わったことは、夜の匂いで知るのかもしれない。どれも切なくて少しさみしくなるけど、とても好きだ。 

暗い夜でも、道端に整備された花壇の花の色は目立っていた。白、濃いピンク、ピンク。ときどき花の匂いもした。何の花かはわからない。

今日はもう家に帰るだけだからと思って、髪型を気にせず、少し上を向いて風を感じながら帰った。春の夜は良い。